その床の1本が、親の転倒を招いているかもしれません。
高齢の親の転倒というと、足腰の衰えや段差の話だと思われがちです。しかし公的機関の資料をたどると、まったく別のものが原因として繰り返し挙がっていました。床を横切る、電源コードです。編集部に寄せられた群馬県のさおりさん(44)の体験談をきっかけに、公表されている統計と事故事例を調べました。
- ある家庭で高齢の母親が転んだ原因は、居間の床を横切っていた延長コード1本でした。
- 消費者庁の資料に書かれていた対策は「束ねましょう」ではなく、「通り道にこないように」でした。
- 記事の後半で紹介する充電器は、事故を防止する製品ではありません。変わるのは、床にコードを出さずに済むことだけです。
ドン、という音が、台所まで届いた
きっかけは、編集部に届いた一通の投稿でした。群馬県に住むさおりさん(44)が、お盆に帰省した実家で見たことです。以下、ご本人の言葉のまま掲載します。
お盆で実家に帰っていました。私は台所で洗いものをしていて、母は居間にいました。上の子(5歳)はテレビの前、下の子(1歳6か月)は座卓のそばで遊んでいました。ごく普通の、夏の午後でした。
15時40分ごろ、ドン、という音がしました。そのあとに、湯のみが転がる音。上の子が「ばあば、ころんだ」と言いました。
母がつまずいたのは、この写真の左手、部屋の入口のあたりです。そのコードは、8年前からそこにありました。
翌日、病院でレントゲンを撮ってもらったところ、骨折はなく打撲という診断でした。「大丈夫、大丈夫」と本人は言ったといいます。
毎年帰っている家です。私も、そのコードを何度も見ていたはずでした。それでも一度も、危ないと思ったことがありませんでした。その夜、もうひとつ思い出したことがあります。
その1時間前、息子も同じ床にいました。1歳6か月の息子が、座卓の下の充電ケーブルを引っぱって遊んでいたそうです。「だめだよ」と言って手から離させた。それだけでした。
床の、たった1本。
今回は打撲ですみました。しかし、同じことが次も打撲ですむとは限りません。編集部では、この「床のコード」がどれだけ事故につながっているのかを、公表資料で確かめることにしました。
転倒で亡くなる高齢者は、交通事故の約4倍
「高齢者 転倒」で調べると、体操や筋力の話が多く出てきます。しかし公的機関が公表している資料には、もっと具体的なことが書かれていました。以下はすべて、公表されている数字です。
65歳以上の死亡者数
(令和2年)
同じ年・65歳以上の
死亡者数
交通事故の約4倍
自宅で起きた割合
寄せられた事故情報
必要なけがを負った方
74歳以下(85件)の約2.2倍
段差でも、階段でもありませんでした。床の、コードでした。
そして同じ資料の、原因の説明にはこう書かれています。
「電源コードに足を取られたり、カーペットやこたつ、座布団に引っ掛かったりして、転倒に至る事故が多く見られます。」
消費者庁「10月10日は『転倒予防の日』、高齢者の転倒事故に注意しましょう!」(令和2年10月8日)対策として書かれていたのは、たった一行でした。
「電源コードが通り道にこないように、電気製品を置きましょう。」
同資料より束ね方では、なかった。
コードを引っぱるのは、高齢者だけの話ではない
床や低い場所に垂れたコードは、乳幼児にとっては手の届く高さにあります。消費者庁には、全国の医療機関から次のような事例が寄せられています。
ケトルだけの話ではありません。さおりさんの実家で垂れていたのは、台所のカウンターの充電コードでした。父親のスマホも、母親のタブレットも、いつもそこで充電していたそうです。
大人には、充電の場所。子どもには、手が届く高さに垂れているコードです。
重傷の記録もあります。製品評価技術基盤機構(NITE)の事故情報には、2022年に大阪府で1歳の女の子が重傷を負った事故が、原因を「電源コードを乳幼児が引っ張った」として記録されています。
出典:NITE「製品安全情報マガジン Vol.495 電気ケトルの事故」(2026年2月24日)80歳の男性の事例。「パンを食べようとしてキッチンへ移動したところ、トースターのコードに引っ掛かり転倒して、キッチンで額を打ち出血した」——額、まぶた、頬にけがを負ったと記録されています。特別なことをしていたわけではありません。朝、パンを焼きに立った。それだけの動作でした。
出典:消費者庁「ご家族など身近な方で高齢者の事故を防止しましょう!」(平成29年9月13日)火のことも、調べました
東京消防庁によると、令和6年中に東京都内で起きた電気設備機器による火災は1,781件。都内の全火災4,518件の39.4%にあたり、最近10年間で最も高い割合でした。
(令和6年・東京都内)
10年間で最高
(令和7年・住宅火災)
死傷者数
件数の割に、けがにつながっている項目でした。記録されている原因の多くは、家具の脚に踏まれ続けたコード、折り曲げたまま使われていたコード、ほこりがたまったプラグ。つまり「使い方と手入れ」です。床にコードがあること自体が、踏まれる機会をつくっていました。
ぜんぶ、床のコード。
2つの家で、コードを数えた
さおりさんは翌朝、実家の中を歩いて、コードと充電器を1本ずつ数えたといいます。
母が寝ているあいだに、実家の中を歩いて数えました。毎年帰っている家です。それなのに、何本あるか一度も知らなかったことが、いちばん恥ずかしかったです。
実家(母と父の2人暮らし)/ 居間・台所・寝室
自宅(4人暮らし)/ リビング・寝室・台所
これは実家ではありません。さおりさんの自宅リビングの角です。上の子のゲーム機と、Wi-Fiと、充電器。「床を横切っていた3本」のうちの2本が、ここにありました。手前に写っているのは、ラグの端です。
これが、実家の居間の床です。母親が転んだのは、この写真の左手、部屋の入口のあたり。「そのうち片づける」と言われ続けて、8年このままだったそうです。
公的機関が言っていたのは、結局この5つ
- 電源コードを、人が通る場所に出さない(床の話)
- コードを束ねたまま、折り曲げたまま使わない
- 家具の下や、脚が当たる場所にコードを通さない(床の話)
- プラグとコンセントのほこりを定期的に取る
- 子どもの手が届く場所に、コードを垂らさない(床の話)
最初に買ったのは、結束バンドでした。見た目はきれいになります。それでも、床からはなくなりません。
電源タップを机の裏に留めて、ケーブルはクリップで浮かせました。床からは、たしかになくなりました。
でも、写真をよく見てください。アダプターが4個、並んでいます。タブレット、時計、ペン、パソコン。1台につき、1個ずつです。浮かせても、差しっぱなしの数は1つも減っていませんでした。——これ、1個にまとまらないのかな。
束ねても、床を横切ったまま。浮かせても、アダプターは4個のまま。まとめることと、数を減らすことは、別のことでした。
整理じゃない。減らすこと。
さおりさんが選んだのは、ケーブルが本体に入る充電器だった
ケーブルが、本体の中に入っています。
選んだ理由はひとつです。コンセント1つで4台ぶんまとまるから。机の上をどれだけ片づけても、アダプターは4個のままでした。それが、1個になります。実家の居間も、うちのリビングも、コードが多いのは「充電するものが多いから」でした。充電器ごとに1本ずつコードが出るなら、数そのものをまとめればいい——そう思ったんです。
出す。挿す。戻す。



これまで
今
「まとめる」と「減らす」の違い
コードを片づける方法は、大きく3つあります。記事のなかで実際に試された順に、何が変わって何が変わらなかったのかを整理しました。
| 束ねる | 浮かせる | 本数を 減らす | |
|---|---|---|---|
| 床からコードが消える | × | ◯ | ◯ |
| アダプターの数が減る | × | × | ◯ |
| 子どもの手が届く位置から消える | × | △ | ◯ |
| 使い終わると自動で戻る | × | × | ◯ |
仕様
実際に使った方の感想
よくある質問
次に実家へ帰る方は、2か所だけ見てください
全部やる必要はありません。さおりさんのお母様が転んだのは、この2か所のうちの1つ目でした。
- 玄関から台所までの床を、コードが横切っていないか
- 座る場所の前に、延長コードが通っていないか
消費者庁の資料には「転倒事故の約半数が住み慣れた自宅で発生しています」と書かれています。住み慣れている、というのは、気をつけなくなる、ということでもありました。
出典:消費者庁「10月10日は『転倒予防の日』、高齢者の転倒事故に注意しましょう!」(令和2年10月8日)この記事で挙がったこと
- コンセント1つで、最大4台。内蔵ケーブル2本+USBポート2つ。
- 使わないケーブルは、本体の中。約65cm・段階的に止まる巻き取り式。
- 通り道に、またぐものがない。床にコードを出さずに済みます。
- 手が届く高さに、垂れない。使い終わると本体に戻ります。
- ボタンも設定もありません。引き出して差すだけ。
- 100V〜240V対応。帰省も旅行も、これ1台。
さおりさんが買ったときの価格
実家の分もつけるつもりなら、最初からセットのほうが安く済みます。さおりさんは1台だけ買って、あとから足したことを「唯一の失敗」と話していました。
まずは、床から。
長い記事を最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
全部を真似する必要はありません。でも今日、ソファの前と、部屋の入口の床だけは、
一度見てみてください。母親が転んだのは、そこでした。
RyoRakuがお約束すること
※記事内の統計・事故事例は、消費者庁「10月10日は『転倒予防の日』、高齢者の転倒事故に注意しましょう!」(令和2年10月8日)、同「毎日が#転倒予防の日」参考資料(令和3年10月6日/厚生労働省「人口動態調査」より)、同「ご家族など身近な方で高齢者の事故を防止しましょう!」(平成29年9月13日)、同「子ども安全メール from 消費者庁 Vol.645」(2024年2月7日)、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)「製品安全情報マガジン Vol.495」(2026年2月24日)、東京消防庁『令和7年版 火災の実態(確定版)』(令和7年12月)・『STOP!住宅火災シリーズ⑤』(令和8年3月発行)に基づいています。数値は各資料の公表時点のものです。
※記事内の事故事例は、各公的機関が公表した実在の事例の要約です。個別のご家庭の状況を保証するものではありません。
※電源タップの多重使用(たこ足配線)、被覆が損傷したケーブルの使用、床を横断させた配線、子どもの手が届く場所への電気製品の放置は、本製品の使用有無にかかわらずお控えください。
※出力値は単体使用時の最大値です(内蔵Type-C 最大45W / 内蔵Lightning 最大12W / USB-Cポート 最大15W / USB-Aポート 最大12W)。複数台を同時に接続した場合、1台あたりの出力は低下します。
※対応機種・必要W数はお使いの端末の仕様をご確認ください。
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